吉田修一

【横道世之介】吉田修一

横道世之介
田舎から東京にやってきた世之介の、なんとも呑気な大学1年目。
そこに未来の世之介の友人達の時間が交錯して描かれていく。
なしくずしに入ったサンバサークル、先輩の紹介で始めた赤坂のホテルでのバイト、世之介に想いを寄せる素っ頓狂なお嬢様。夏はワンルームの暑さに耐えられず、友人の加藤の部屋に入り浸ったりしながら、世之介の大学生活はひたすら無益にオモシロオカシク過ぎていく。
途中までコメディかと思いながら読んでいたのだけれど、この話は最後にずーんと響いてくる。
夏に部屋に入り浸られ、さんざん迷惑をこうむったろう加藤が、未来の生活の中で世之介を思い出し、青春時代に世之介と出会った自分はなんだかとても得をしていると思う、そのシーンにじーんときてしまったりする。
だらだらとヒマを食い潰す世之介の1年間は、しっかりと人との関係を作りながら、未来に向かって根を張っていく。読んでいるとホッとして、希望がわいてくる。
それにしても、世之介って笑える。公園のベンチでスイカを食べているシーンとか、腹がよじれた。
(2010.10月14日読了)

吉田修一

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【悪人】吉田修一

悪人
福岡市に住む保険外交員の若い女性が、携帯の出会い系サイトで知り合った、長崎市郊外の同年代の土木作業員によって絞殺される。彼女の遺体は国道沿いの崖の下で発見された。

この事件を巡る人間関係と、その内面を、じっくりと掘り下げている。
不実さゆえに逃げ延びることが出来る人間と、誠実であるがゆえに追い詰められていく人間。
ふたつの対照的な人間性を浮かび上がらせる事件の設定もうまい。
脇役として登場した人たちもそれぞれに存在感があり、
舞台である北九州一帯の空気を吸っているような気がするほどの地域の描写も見事。
ただラストがドラマチックすぎて、前半での人物描写が霞んでしまった。
中盤までのたんねんな進行が、地味ながら、地に足がついていて、好きだったのだけれど…
リアルすぎると、読後感が重くなってしまうという判断があったのでしょうか…?
(2008.10月5日読了)

吉田修一

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