篠田節子

【百年の恋】篠田節子

百年の恋
さえないフリーライターの真一は、ピンチヒッターで依頼されたインタビューの仕事で、
エリート銀行員・梨香子と出会い、プライベートで会う約束までしてしまう。
抜群の美貌と頭脳、にこやかで公正な梨香子。
有頂天の真一は、あっという間に梨香子との結婚になだれ込んでいった。

「百年の恋」は、これまた、あっという間に醒めてしまう。
梨香子の私生活は、凄まじくだらしなかった。腹を立て続けながら、家事をこなす真一。
まもなく、梨香子のお腹に赤ちゃんがいることが判明して…

真一は家事の能力があって稼ぐのはいまひとつ、梨香子は仕事は出来るが家事はからきし。
それで良しとするのは意外と難しい。世間のしがらみ以上に、自分が納得できない。
何度も喧嘩を繰り返しながら、それでも真一に一途な梨香子が可愛らしい。
でも、梨香子と暮らすのはキツイかな〜。エリートの男性からも慕われつつも、
まっしぐらに真一をゲットした梨香子、本能のなせるわざでしょうか、流石です。
(2008.11月7日読了)

篠田節子

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【ゴサインタン】篠田節子

ゴサインタン
豪農の跡取り、結木輝和は40歳を前に、ネパール人の女性・カルバナを嫁として迎える。
妻となったカルバナを、外国語の名前では呼びにくいと、初恋の女性の名前で呼ぶ輝和。
カルバナは結木家での生活に馴染むことがないまま、次第に奇行が多くなり、
ついには、結木家のすべてを失わせていく。

輝和は、結木家をなくしたことで、ようやく自分と向き合えるようになる。
本当に自分が必要としているものを欲し、
結木家の本来の姿である「百姓」として、「再生」する。
鬱屈した生活から、何かを求めて転落する姿に、この前読んだ【聖域】がよぎり、
土に生きることで、神に近づいていく女性の姿に、【逃避行】のラストが彷彿させられた。
日本の農業、新興宗教、第三国への援助、、、様々なテーマが凝縮した、密度の濃い作品。
最後の最後でたどり着いたカルバナの笑顔に、やっと息がつけた。
(2008.10月9日読了)

篠田節子

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【逃避行】篠田節子

逃避行
郊外の一戸建てに、夫と娘と暮らす50代の主婦・妙子。
ある日、妙子の愛犬・ゴールデンレトリバーのポポが、隣の子どもを噛み殺してしまった。
犬を処分するよう、家族からも迫られる、妙子。
事件の原因は、ポポを虐め続けた隣の子どもにあり、
もともと臆病で優しいポポを妙子は見殺しにすることが出来ない。
ポポは、孤独な妙子の唯一の味方なのだ。
雪の降る夜、妙子はポポとともに、命がけの逃避行に出る。

主婦と主婦以外の人では、この本を読んでの感想が違ってくるんじゃないかと思った。
日常の中で少しずつ磨り減っていった挙句の妙子の姿は、他人事じゃない。
もし、あのまま毎日が過ぎていたら、妙子にとって、これほど不幸なことはなかっただろう。
ポポの居場所を探す逃避行が、妙子を自由にした。
私もそろそろ、色々考える時期にきているだろうと、いや、ほんとに考えさせられました。
最後はとても篠田氏らしく、人としての生き方や幸せを追求していきます。
(2008.10月7日読了)

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【聖域】篠田節子

聖域
文芸誌の編集部に異動した実藤は、退職した編集者の机から、未完の原稿「聖域」を見つけた。
異様な力をもつ作品に魅入られ、完成を渇望するが、作者の水無川泉の行方は分からない。
関わったものを破滅へと向かわせる、水無川泉。手を引くよう、忠告を受ける実藤だが、
作品の舞台である東北の地へと、水無川を追っていく…

東北の地で受け継がれてきた独特の死生観。
行方不明の作家を追いながら、その不思議な世界へと入り込んでゆく。
どこかにあるに違いない、と思わせる「聖域」の描写が圧巻でした。
(2008.9月25日再読)

シカフの【聖域】のレビューはこちら

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【ハルモニア】篠田節子

ハルモニア

「あなたの手で、天才を育ててみない」 -
臨床心理士の深谷から、そう持ちかけられたチェロ奏者の東野秀行は、
音に対して並外れた感覚をもつ少女、由希と出会う。
人間的な感情とは遠い、残酷さをむきだしにした由希の性格。
そして、彼女の持つ特殊な能力…。
真の音楽性を追求しようと由希の能力にのめりこみながら、東野は壊れていく-。

ホラーです。
でも、怖ろしいのは、ホラーっぽく演出された部分ではなく、
臨床心理士・深谷や東野の、由希のもつ能力や存在に執着していく欲望の方。

大山尚利の【揺りかごの上で】も、
ホラーっぽいところより、赤ん坊との穏やかな幸福にのめり込む主人公が怖かった。

何かに執着する人間より、怖いものはないってことか。 (2008.9月17日読了)

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