新田次郎

【孤高の人】新田次郎

新田次郎全集〈第6巻〉孤高の人 (1975年) ※古書なので画像ナシ

昭和初期の実在の登山家「単独行の加藤文太郎」の半生を小説化した本。
神戸の造船会社の研修生時代から山歩きを始め、めきめきと頭角をあらわした加藤は、会社員として限られた時間と資金のなか、単独行で冬山の難ルートを制覇していった。

分厚い本でもあり、いろいろな楽しみ方が出来る。
加藤文太郎の山行のすごさに感服するのはもちろんだが、
携行品や行動食については登山の実用書になっているし、
神戸での会社の話、恋愛がらみの話など、普通の小説としても面白い。
山の情景も素晴らしく、空の景色、星空、雪を踏む音、夜明けの峰々。。。
五感に迫ってきて、まるで自分が歩いているような気がする。

英雄伝と評価される本だが、実際に読むと、不器用でおっちょこちょいなところもある加藤の様子が可愛い。
最期は、加藤の人間らしい弱点が遭難へと追い込んでいったように思われて、切なかった。

実在の「加藤文太郎」が本名で出てくるが、新田次郎が創作した部分も多い。
本名を使用したのは、加藤文太郎の奥さんの強い希望があったと断り書きにある。
加藤以外の登場人物は仮名。 加藤自身による手記【単独行】を参考としたそうだ。
(2010.1月14日読了)

新田次郎

2件のコメント  |  トラックバックURL:http://kalapanic.com/2010/02/post-1445.php/trackback

【槍ヶ岳開山】新田次郎

槍ヶ岳開山
江戸時代後期、槍ヶ岳の開山に尽くした播隆上人の生涯。
米問屋の手代・若松は、愛妻・おはまとの幸せな生活を送っていたが、百姓一揆にまきこまれ、おはまを自身の手で過って殺してしまう。 間もなく一揆の荷担者として国を追われた若松は出家し、修行僧・播隆として、おはまの最期の姿に苦しめられながら、許しを請い続ける。 そして、いつしか槍ヶ岳の頂に、おはまの姿を求めて、苦しい登攀に挑むようになる。

播隆とともに出国した弥三郎が、播隆と奇妙な関わりを持ち続け、ただの英雄伝説に終わらない深みを出している。 金と色にばかり生きる弥三郎だが、彼の人生もまた、おはまと若松への償いに追われていたのだった。

播隆上人のおはまへの煩悩を生々しく描きながら、人物描写は無造作に筆をおいた絵のよう。
甘さを感じさせない歴史小説。 最近は、キャラクターを描きすぎて、甘口な歴史小説が多いけれど、やっぱり辛口はいい。
(2009.10月30日読了)

新田次郎

1件のコメント  |  トラックバックURL:http://kalapanic.com/2009/11/post-1491.php/trackback

【劒岳―点の記】新田次郎

劒岳―点の記
明治39年、日本地図は完成まで、残すところ、わずかとなっていた。
残された空白地帯は、未踏の劔岳山頂を含む、北アルプス立山連峰一帯。
困難を極めるこの一帯の測量に、陸軍測量官・柴崎芳太郎が任命された。

測量に要する作業は、現地の下見、三角点を設置する場所の下見と選定、設置のための材料の運搬、点上の櫓の建設作業、三角点の埋設、、、そして測量である。これらの作業を計画にそって、一帯の三角点を設置・測量していく。
劔岳登頂は、この仕事の一環であり、目的ではない。
厳しい自然にさらされながら、測量官・人夫らは、ただ黙々と任務を全うしていく。

道なき道を登り下り、突風に飛ばされかけ、吹雪のなか道を失い、雪崩に埋もれながらも、体勢を立て直して、ひとつひとつの三角点の測量を行ってゆく彼ら。 劔岳登頂以上に、彼らの地道な努力と謙虚さに感動します。
(2009.8月22日読了)

新田次郎

コメントをどうぞ  |  トラックバックURL:http://kalapanic.com/2009/10/post-1497.php/trackback