中島京子

【小さいおうち】中島京子

小さいおうち
昭和5年、小学校を卒業したタキは故郷の山形から女中として働くために上京する。
「小さなおうち」は、モダンな赤い三角屋根の家で、郊外の坂の上にあった。
おもちゃ工場のお偉いさんで羽振りの良い旦那さま、時子奥様、お坊ちゃまの3人家族。
きれいでお気楽な時子奥様を、タキは大好きだった。
「小さなおうち」の女中部屋を終の住処と感じていた。
しかし、太平洋戦争がはげしくなるにつれ、そんな平和な暮らしも無惨に壊されてしまう。
この話は、タキが晩年、当時の手記を書きながら、振り返るかたちで語られる。
この手記を読んだタキの甥の次男が、開戦前、勝利を信じて華やかな気持ちでいたタキたちのことを「何も知らなかったのか」となじる場面がある。タキはその言葉にふてくされてしまう。
大切なものを失くすまで気付かなかったことに、タキはずっと悔しく思っていたのだろう。
時代が大きく動くなかで、毎日が楽しくあるようにと暮らしていたタキたちの姿を、小さな窓から覗いているようだった。
(2011.1月24日読了)

中島京子

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