松井今朝子

【非道、行ずべからず】松井今朝子

非道、行ずべからず
文化六年・正月興業の初日、火事の延焼により、江戸随一の芝居小屋・中村座が半焼。
焼け跡から、行李に入れられた男の死体が発見される。
身元不明の死体、下手人は一体誰なのか? その目的は?
おりしも人気女形・荻野沢之丞の名跡が兄弟で争われるなか、
芝居小屋の人々の間に疑心暗鬼が広がる。

歌舞伎研究家であり、ミステリー作家でもある松井今朝子氏。
直木賞受賞作の【吉原手引草】もよかったが、ミステリーの仕掛けは、
こちらの方が凝っている。 三部作ということで続きも楽しみ♪
結末は、さらりとした感じで、もっと突っ込んでほしい気もしたけれど、
このあっさり感が、江戸っぽさかな。

劇場主・十一代目中村勘三郎、還暦を過ぎてなお妖艶な女形、しゃっきりイケメンの裏方、オコゼ顔で情が厚い下っ端女形、、などなど、芝居小屋に群がる人間たちが面白い。
また、当時の芝居の脚本がどのように作られたのか、そばで見ているように分かり、
これがまた、オモシロかったです。
(2009.5月6日読了)

松井今朝子

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【似せ者】松井今朝子

似せ者
似せ者(にせもん) / 狛犬 / 鶴亀 / 心残して

江戸時代の歌舞伎を題材にとった短編集。
一世を風靡した役者と、その華やかさに翻弄される人の姿が、
絶妙な匙加減で描かれている。
表題作「似せ者」は、一代目坂田藤十郎亡き後、
京に連れてこられたそっくりさんの旅芸人、二代目藤十郎の話。
似せ者として生きることを望まれた彼が、手に入れたホンモノは…

「鶴亀」は、大阪の人気役者・嵐鶴助と、彼の我が儘に翻弄される興行師・亀八の話。
天才ゆえの天真爛漫さで周囲を振り回しながら、芸への執着から逃れられない鶴助。
ラストシーンでの亀八の行動が、無関心に装いながら、逆に鶴助に惚れ込みようを見せて、特に気に入ったシーンでした。
(2009.4月17日読了)

松井今朝子

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【吉原手引草】松井今朝子

吉原手引草
ひとりの男が、ふらりと吉原の引手茶屋をたずね、お内儀に遊び方を教えてくれと頼む。
話が進むにつれ、男が行方知れずとなった「葛城花魁」のことを探っていることが分かり、
腹を立てたお内儀に、追い出されてしまう。
話はこの後、章立てごとに、吉原に関わるさまざまな人間たちが登場し、
男に語る話で、「葛城花魁」の謎を明かしていく。
各章とも語り手のセリフのみで、男の姿は見えない。男の正体も、謎のまま。
行方不明となったその夕刻、何が起こったのか、花魁の目的はなんだったのか。
本筋以外の吉原にまつわるエピソードも面白い。

はまりました〜!
なかでも、信濃屋の若旦那・茂兵衛の話がよかった。
3年前入り婿として若旦那となった、信濃屋茂兵衛。
婿入り前、一度だけでも贅沢な遊びをさせてやりたいと、
同じくかつて入り婿であった義父の大旦那に吉原に誘われた。
全盛の葛城花魁との夢のような一夜。大旦那は、そのために一財産をはたいた。
こうやって生きていくんだなあとしみじみさせられる話。

去年の暮れ、築地のマダムSさんが推薦してくれました。
直木賞受賞作で人気も高く、8ヶ月待って、図書館の予約順がまわってきました。
やっぱり、好きだわ、江戸時代モノ。 (2008.8月31日読了)

松井今朝子

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