幸田露伴

【五重塔】幸田露伴

世事に疎くウダツの上がらない「のつそり」と渾名される大工の十兵衛。
大工としての腕はたつ十兵衛は、感應寺・五重塔建築の話を聞き、
これを自分の手で建てる事ができるならと、寺の朗圓上人に直談判に赴く。
この仕事は、十兵衛の親方で周囲の信頼も篤い源太が請け負う予定だったのだが。

周囲の思惑も、義理も人情も捨てて、ただただ五重塔建設を願う十兵衛。
十兵衛・源太・寺の上人、周囲の思惑と人間関係が、面白く描かれる。
親方・源太は、男気のあるすごくいい奴。対する十兵衛は、ちょっとは周りのことも考えろよ、とイライラさせられるタイプ。
その十兵衛の、完璧な仕事をしたい、業績を残したい、という真剣な気持ちにつり込まれてゆく。
完成したときの朗圓上人の言葉に、仕事を成すとは何なのかとの示唆があり、物語は終わる。
このお話のモデルとなった谷中天王寺・五重塔は、昭和32年放火により消失。
そういえば、【警官の血】では、この心中放火事件が物語の鍵になってました。

昭和2年発行の岩波文庫創刊時の復刻版。
旧仮名遣いの文章は、読みにくくはありましたが、独特の味があります。
奥付に「定價 二十銭」とあり、ビックリ。
「銭」も勿論、旧かな。パソコンでは文字が出てきません。
(2008.12月23日読了)

幸田露伴

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