井上靖

【氷壁】井上靖

氷壁
穂高連峰・前穂の東壁。小坂と魚津、ふたりの若い登山家が冬期未踏のルートを征服するべく、凍りついた岩壁を登っていた。一瞬。トップをとっていた小坂が落下、後ろでひかえていた魚津の視界から消えた。ふたりをつないでいたはずのナイロン・ザイルをたぐると、ザイルは無惨に切断されていた。
親友を失った悲しみ、切れないはずのナイロン・ザイルが切れたことに対する世間の疑惑。
残された魚津の苦悩の日々が、いくつかの視点から描かれていく。

井上靖が、上高地・徳沢園にこもって書いたという山岳小説。
なるほど山の風景が美しく描かれているけれど、、、舞台はほとんど都内のような。
山というより、魚津をめぐる色々な人間関係が面白い。
特に小坂が横恋慕していた八代美那子と、彼女の二十七歳年上の夫・教乃助との一種独特の感情のやりとり。井上靖はこういう繊細な感情の描写がウマいなあ。子どものころ土蔵でつちかった観察眼がいきているんだろうな。
ラストは思いきりロマンチック。山男のロマンと言うやつなのかしらん。
(2009.11月29日読了)

井上靖

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