羽根田治

【トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか】羽根田治

トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか
低体温症と事故の教訓
大量遭難/証言/気象遭難/低体温症/運動生理学/ツアー登山
2009年7月16日・北海道大雪山系トムラウシ山でツアー登山中に起きた大量遭難について
様々な専門的な視点から、その過程と原因を検証している。
当時の報道では、ウェアなど装備の不備、風雨による濡れ、ツアー客の経験不足が大きな要因として取り上げられていた。しかし、これらの点に大きな不足がなかったことが、この本での取材によって明らかにされている。
大量遭難死に至る直接のきっかけとなった低体温症を引き起こしたのは、当初考えられていたものとは違う原因があった。
多くの報道で言われてたガイドの判断ミス、ツアー会社のスケジュール重視による無理な山行という要因は間違ってはいないが、先に挙げた誤った報道により、重要な点が見過ごされてしまっている。
これらの報道によって「自分は経験もあるし装備も充分だから関係ないだろう」と考えた人たちが、また同じような状況に陥ってしまうのではないかと思うと怖い。
低体温症は夏山でも短時間で進行し、あっという間に判断力を失うそうだ。そして重ね着をするなどの当たり前のことさえ出来なくなってしまう。山で体温が低くなってしまってからでは、取り返しがつかない。
低体温症の進行や原因は、自分が考えていたようなものではなかったことがショックだった。
「この事件は自分には関係がない」と思わずに、ひとりでも多くこの本を読む人が増えるようにと願います。
(2010.9月6日読了)

羽根田治

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【山の遭難】羽根田治

山の遭難
―あなたの山登りは大丈夫か
第1章 山の遭難小史
第2章 統計が語る現代の遭難事情
第3章 救助活動の現場から
第4章 遭難事故のリアリティ
第5章 なぜ増える安易な救助要請
第6章 ツアー登山とガイド登山
「遭難ライター」とも呼ばれる羽根田治氏の新刊。
近代登山の歴史と傾向が分かりやすく解説され、山を舞台にした本・映画なども網羅、
資料としても役に立ちそうだ。
4〜6章では、現在の登山者の安易な姿勢をとりあげて、苦言を呈している。
そして、安易な救助要請についても、山の救助がいかに困難を極めるものなのか、実例をあげて考え直すよう、促している。
ヘリコプターによる救助は、1時間につき5、60万が目安になる。
警察・消防・自衛隊のヘリコプターは人命救助として税金でまかなわれて無料だが、民間の場合は遭難者側が実費で支払うことになる。
救助にどの機関が動くことになるかは、状況次第で、その格差も問題となっており、また無料で来てくれる公共機関のヘリコプターに安易に頼る登山者も多いらしい。
この状況を少しでも改善しようと、公共のヘリコプターも有料にすべしという法案を立てようとしたのが、元長野県知事・田中康夫だったのは意外だった。
(この人、アイディアはいいのに、実行する力に欠けてたなあ。残念)
私もつい最近まで山がそんなに怖いものとは(低い山でも)、知らなかった。
この認識不足が、マズいのだ。
学校遠足は、いい機会だと思うので、楽しく山登りをするだけでなく、
山に行く心構えをきちんと教える場にしたらいいんじゃないかと思う。
そうしていたら防げたであろう子どもの遭難も、去年あったじゃないか。
(2010.4月29日読了)

羽根田治

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【ドキュメント 滑落遭難】羽根田治

ドキュメント 滑落遭難
羽根田治氏のドキュメント【道迷い遭難】 【気象遭難】に続く3冊目。
表紙も南アルプス・大キレットの鋭い稜線。おそらく私には縁のない世界が舞台の中心。

少しでも気を抜くと踏み外す細く険しい登山道。そもそもこれを道というのだろうか?
足を滑らせたら、そこから命の保障のないジェットコースターが始まる。
6つのドキュメントの中で、生きて還った人の方が多いのが不思議なくらいだ。

巻末に『近年の事例 埼玉県警山岳救助隊からの報告』という章があり、
こちらは、比較的普通の登山者の滑落遭難の例があげられている。
その多くが、道に迷ったあげくの滑落。もしくは、下山途中での滑落事故。
気を抜くと転んでケガをするのは、高尾山でも例があるし。油断大敵。
(2009.10月26日読了)

オマケ <剣岳 カニのヨコバイ>

鎖のついた崖にしか見えません。これをほんとに道というんでしょうか。

羽根田治

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【生還―山岳遭難からの救出】羽根田治

生還―山岳遭難からの救出
実話で、死亡という結末はつらい。生還というタイトルで、安心して読めました。

日帰り登山のはずが、17日間山を彷徨う、志賀/岩菅山の話もすごかったが、
この中で印象深かったのは、福島/飯森山での話。
あやふやな情報から、沢に向かって下山をしてしまうおじさん。
案内図に「沢コース」として書かれていた大桧沢は、本格的な沢登りのルート。 難所なのだ。もちろん一般ルートでもなく、下ることもできない。
苦戦を強いられながら、どうにか下ってゆくが、ついに下ることも登り返すこともできなくなる。 そこで救助を待つことを決め、ときどき現れる幻覚に悩まされながら、待ち続け…

この本の中でも、救出後、もう一度現場に戻って自分の行動を検証しようとする人と、それを拒む人が出てくる。
このおじさんは、検証しようとするタイプ。 おじさんは、遭難の翌年、飯森山沢開きに応募して現場にもどろうとしている。 命からがら還ってきた沢。 おじさんは、何を見て何を感じるんだろう。

慎重な人でも、ふとしたことから、抜けられなくなる山。
ひたすら生き延びることだけを信じる人たち。 もちろん運の良さもあるけれど、生きることに集中してゆく精神力がスゴい。 イザというとき、私もそんな火事場の馬鹿力を発揮できるのでしょうか…
(2009.10月25日読了)

羽根田治

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【ドキュメント 気象遭難】羽根田治

ドキュメント 気象遭難
1989年から2002年にかけて起きた、気象を原因とした7件の遭難事件を、取材によって再構成している。 突風、落雷、暴風雨、暴風雪など。

特に印象に残ったのは、1989年夏に北海道・トムラウシ山で起きた、暴風雨によるもの。 今年7月に起った登山ツアーでの遭難事故と、同じ季節・同じルート上での遭難事故であり、死亡原因も低体温症によるもの、と類似点が多い。 また、どちらも、前日からの山行で体調を崩していた人がいたことが、大きかったように思われる。
類似点が多いだけに、前回の事故をふまえていれば、今年の事故は防げただろうに、と考えてしまう。

ベテランの事故は、主に冬山だったけれど、中級〜初心者は、夏・秋。 
いい季節だと思っていたら、天候が一変。 そこで諦めて登らないことが重要だろうと、つくづく思う。 人間は山に勝てないんだし。
(2009.9月26日読了)

羽根田治

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