遠藤周作

【海と毒薬】遠藤周作

海と毒薬
東京郊外の辺鄙な土地の個人医院。
埃が積もった診察室、勝呂医師はどこか投げやりな様子だが、治療の手腕は見事だった。
勝呂は、戦時中、外国人捕虜の生体解剖実験に関わっていた。
勝呂の告白から始まり、解剖に加わった人々の心の経緯が語られてゆく。
子ども部屋の本棚にひっそりと置かれていたのを読んでみた。高校の課題図書だったらしい。始めから、かなり不気味な雰囲気で、怖がりな子は読むのが苦痛だったんじゃないかと心配になってしまった。
異常な時代に消耗していく人間と、糧にして活気づく人間と。
今の時代、ひとくくりにされがちな戦争経験者の胸の内だが、個人を追ってゆくと、背筋が凍るような感情に突きあたる。そういう空気は、今はもう無くなっているけれど、自分が子どもだった頃は、まだ残っていたように思う。
(2011.6月20日読了)

遠藤周作

コメントをどうぞ  |  トラックバックURL:http://kalapanic.com/2011/08/post-2001.php/trackback