【小さいおうち】中島京子

小さいおうち
昭和5年、小学校を卒業したタキは故郷の山形から女中として働くために上京する。
「小さなおうち」は、モダンな赤い三角屋根の家で、郊外の坂の上にあった。
おもちゃ工場のお偉いさんで羽振りの良い旦那さま、時子奥様、お坊ちゃまの3人家族。
きれいでお気楽な時子奥様を、タキは大好きだった。
「小さなおうち」の女中部屋を終の住処と感じていた。
しかし、太平洋戦争がはげしくなるにつれ、そんな平和な暮らしも無惨に壊されてしまう。
この話は、タキが晩年、当時の手記を書きながら、振り返るかたちで語られる。
この手記を読んだタキの甥の次男が、開戦前、勝利を信じて華やかな気持ちでいたタキたちのことを「何も知らなかったのか」となじる場面がある。タキはその言葉にふてくされてしまう。
大切なものを失くすまで気付かなかったことに、タキはずっと悔しく思っていたのだろう。
時代が大きく動くなかで、毎日が楽しくあるようにと暮らしていたタキたちの姿を、小さな窓から覗いているようだった。
(2011.1月24日読了)

中島京子

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コメント&トラックバック
  1. lazyMiki  

    きっと、絵本の中に出てくるような、人が(というか女性?)が「夢の家」と言われてすぐに思い浮かべるような、小さいけれど常に陽だまりの中にあるような家だったんだろうなと思います。
    今となっては失われてしまったものだけに、一層思い出の中で輝くんでしょうねぇ・・・。
    先日、何とか「シカフ文書(「もんじょ」って読んでね。私の頭の中での一ジャンルです)」を1冊くらい読みたいものだと思い、「無力感は狂いのはじまり」を図書館に予約しようとしたら、蔵書がなかったんですよねー。少し時間がたったらまた検索してみます。
    で、他に何かないかなーと探して「新世界より」があったので予約したんですけど、今見てみたら、これはたこΩさんのレビューでしたね。

  2. トラックバック: 本と旅とそれから

    小さいおうち/中島京子

    第143回(つまり直近の)直木賞受賞作。
    とても素敵な1冊で、私にとってはお初の中島京子さん作品なものですから、とても嬉しい♪
    ここのところ、我な…

  3. たこΩ  

    lazyMikiさん、こんにちは〜
    思い出のなかできらきら輝きながらも、ちょっと不穏な空気もあった、というのが面白かったです。奥様の不倫とか、旦那さまと奥様の関係とか… その微妙なバランスが根こそぎ壊されてしまったのが、タキには悔しかったのでしょうねぇ。
    「シカフ文書」ww… たこ的には、やはり一連の倉阪鬼一郎作品がおさえどころか!と思うのですが。いかがかな?
    【新世界より】面白かったです。上下巻で分厚いのですが、スピード感があって、イッキ読みしました〜

  4. シカフ  

    lazyMikiさん、今晩は。
    文書:参照されることを前提として記録される情報 (ウィキペディアより)。
    博識でいらっしゃる。文書・・・ワタクシは初めて出会い、ウィキに旅立ちました。
    倉阪作品は、前触れなくスプラッターになる場合があるので取り扱い注意です。
    【活字狂想曲】は公共の場で読めないほどの大爆笑ですけれどねw

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