【あなたのための物語】長谷敏司

あなたのための物語
量子コンピューターで編集したデータを脳内に形成した疑似神経を経由させ、経験や感情を直接インプットする言語ーITPー。
その開発責任者サマンサ・ウォーカーが、難病により余命半年を宣告をされる。
目前に迫る死を受け入れられないサマンサは、ITPによる自身の人格のコピーを試みたり、ITPの問題点の克服に打ち込んで目前の苦痛や恐怖を忘れようとしたり、のたうちまわり続ける。
今や余命いくばくもないサマンサの研究室には、試験体として作られた仮想人格<wanna be>だけが残された。
ITPテキストによる人格の創造性を証明するために物語を書くことを動機付けされた<wanna be>。創造主であるサマンサを見つめ続け、サマンサの役に立つことを望み続けた<彼>は、サマンサのためだけに物語を書き続けた。
<wanna be>がサマンサに受け入れられるためにつくった最後のシナリオに泣けてしまう。まるで「トーマの心臓」じゃあないか。
生の果ての死とは何か、脳内で働き続ける神経による情報の伝搬を人格というのか、愛情とはなんなのか。
シビアに問いかけ、戦い続ける物語の最後は、容赦がないのに安らかでした。
(2010.8月5日読了)

長谷敏司

トラックバックURL:http://kalapanic.com/2010/09/post-1919.php/trackback

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>