【残念な日々】ディミトリ・フェルフルスト

残念な日々

ディメトリーは、父親とともにレートフェールデヘム村の祖母の家に住んでいた。
祖母の家には、ほかにも3人の叔父も出戻ってきていた。
しかも4人とも、のんだくれだ。昼から飲みはじめて朝まで呑む。ぐでんぐでんになって次の昼を迎える。

『神が昼と夜をつくり、ぼくらはそこをよたよた歩く。』

ディメトリーがフェルフルスト一家と過ごした日々は目茶苦茶なものだったが、愛情と笑いと詩に満ちていた。

やがてディミトリーの心は、フェルフルスト一家から離れていく。
父親は墓に入り、ディメトリーには息子が生まれる。のんだくれの叔父たちとは違う世界の住人となっていく。
まっとうな生活を手に入れたディメトリーだが、しかし、のんだくれ一家との愛情を断ち切ることはできない。

物語の中で、一見まっとうに見えるロージー叔母の家族や、かつての同級生フランキーもかなり残念だった。
ディメトリーも幸せな日々を手に入れたものの、どこか残念なところがある。
息子の母親とは最初からうまくいかなかったし、大事に思っているはずの息子と過ごす時間は苦痛なのだ。

どの人もこの人も、よたよたと生きている。
思っているような幸福はどこにもないけれど、神様のつくった世界は光に満ちている。

(2011年7月20日読了)

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【サヴァイヴ】近藤史恵

サヴァイヴ

老ビプネンの腹の中/スピードの果て/プロトンの中の孤独/レミング/ゴールよりももっと速く/トウラーダ

【サクリファイス】【エデン】に続く、ロードレース・シリーズ(?)三冊目。
今回はそれぞれ独立した短編になっている。
前2冊での主人公・白石誓の語りから始まるが、チーム・オッジの伊庭、赤城も語り部として登場する。
【サクリファイス】のラストで驚くような決断をみせた石尾が、プロに転向してからエースになるまでの話が、チーム内で唯一の理解者だった赤城の視点から語られる。
石尾があの決断をするまでの経緯が想像でき、あらためて【サクリファイス】も読み返したくなった。
石尾…そうだったのか〜。

乾いたような、熱いような、ひんやりとしたような。
自力でスピードを上げてゆく、極限の狂気みたいなものがよく出ていて、 そんなところが、気に入ったシリーズでした。
3冊目ということでキリがいいようにも思うのですが、まだまだ番外編とか読んでみたいです。出ないのかな?
(2012.4月2日読了)

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【玉村警部補の災難】海堂尊

玉村警部補の災難
とある穏やかな午後、田口センセと玉村警部補が、警視庁のデジタル・ハウンドドッグこと加納警視正の活躍した事件を振り返る…(不定愁訴外来の訪問者)

東京都二十三区内外殺人事件/青空迷宮/四兆七千億分の一の憂鬱/エナメルの証言

短編ごとに【不定愁訴外来の世迷い言】として、玉村と田口の感想がはさまれる。
いかに自分たちが加納の傍若無人さに振り回されているかを愚痴り、そして分かり合えるもの同士、静かに目で語るのだ。

気に入ったのは、【エナメルの証言】。
「生まれ変わりビジネス」の一端を担う「歯科医」の栗田の話。
栗田にかかれば、自分の歯の治療痕を他人の口のなかに再現できる。
淡々と誠実に仕事を仕上げる栗田。栗谷は本当にこの仕事に向いている。
この栗田、最後は四国へ行くのだが、続編があれば嬉しいなあ。
いつかお遍路道をしょんぼり歩く玉村警部補と出会う日は来るのでしょうか。
(2012.6月9日読了)

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【アブラクサスの祭】玄侑宗久

アブラクサスの祭
映画にもなったちょっと変わったお坊さん、浄念の話。

浄念は、躁鬱の状態をさまよいながら「自分」に苦しみ続けている。
自殺未遂をし、その後自分を引き受けてくれた玄宗のもとでお勤めをしながら、
妻の多恵と、息子の理有と暮らしている。
抗鬱剤・抗躁剤・抗分裂剤を服用しながらも、心穏やかに暮らすのは難しい。
浄念が自分の存在に折り合いをつけるには、歌を歌うことしかない。
そして、今自分が住む町でライブを開催することを決めた。

不安定な浄念を自分の寺に引き受けるのは、玄宗にとってリスクの大きかったろう。危うい浄念を見ながら、玄宗は自分に向かっていろいろな自問自答を繰り返していく。玄宗は浄念のなかに「有り難く立派なお坊さんが棲んでいる」という。

お坊さんというと、葬式や法事で必要な人というイメージになってしまっているけれど、本来は宗教人なのだから、こういう一面はあっていいんじゃないかと思った。
自分のなかの混乱を引き受ける人、そういえばイエス・キリストも引き受ける人でしたね。
(2012.4月13日読了)

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【マリアビートル】伊坂幸太郎

マリアビートル
東京発盛岡行き、新幹線〈はやて〉。
息子の復讐を誓った「木村」はターゲットの中学生を探していた。
「七尾」は、頼まれたトランクを盗って上野で降りなければならない。
「蜜柑」と「檸檬」は、八分通り終えた仕事を納めに盛岡へ向かう。
ところが…

【グラスホッパー】をベースにした、アブナイ登場人物たちの2時間半。
膨らむトラブル、積み上る死体…。
伊坂幸太郎の本領発揮、痛快娯楽サスペンス。
【グラスホッパー】が陰なら、こちらは陽だろう。
どいつもこいつも、スゴい性格の持ち主である。
果たして誰が生き残れるのか。できたらあの最悪な中学生には死んでほしいと思いつつ、
ヒヤヒヤワクワクと楽しませてもらった。
東北新幹線の車内で読めたら、さらに面白いんじゃなかろうか。
(2012.4月10日読了)

表紙の装丁が読んだときとは別のものになっていました。
まえの方が好き…だったかな。

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